※ネタバレ注意
(本日紹介する漫画)
「最果てから徒歩5分」(糸井のぞ著 新潮社)
(作品紹介)
自殺の名所「死出ノ岬」(本当の名は志手ノ岬)から徒歩5分にあるオーベルジュ(宿泊設備を備えたレストラン)・ギルダ。幸田すももが「ある出来事」をきっかけに「死出ノ岬」にやって来たことで、物語が始まるー。
(感想)
本作を読んでいてどこかで見たことがある絵だなあと思ってググったら、父娘の不器用な交流を描いた「真昼のポルボロン」の作者であることを知りました。本作でも第3話が、ちょっと「真昼のポルボロン」を彷彿とさせました。
自殺の名所とスマホで取り扱われるようになってから、そういう人がやたら訪ねて来るようになってしまい、主人公幸田すももに限らず、人生に疲れてしまってしまった人々がオーベルジュ・ギルダに集います(一番近い宿屋兼料理店だから)。
その人生に疲れたという理由というのが、
・パワハラ
・不倫による降板
・自己嫌悪(生きるのが嫌になる程のすさんだ生活)
・失恋
・離婚
・逃げたくなるほどの辛い出来事
という、もう本当に分かりみしかないような内容が並びます。
本作品の凄いところは、流石にデリケートな問題を扱うだけあって、
オーベルジュ・ギルダの人々の取る行動や、マネージャーの夕雨子さんの台詞が非常に具体的かつ的を得ている事。
ストーリー漫画としても読めるけれど、これ思い悩んでいる人たちへの「漫画セラピー」として十分いけるなと思いました。
いかにもその問題対策といったパンフレットでは「自分はそんな大ごとにいる状態じゃない!」と敬遠されるようなことでも見た感じあんまり関係なさそうな普通の「ストーリー漫画」として読むなら、敷居が低く、多くの人がスッと読んで貰えそうな気がします。
今誰にも言えずに思い詰めている人は読んでみて下さい。
ハウツーとしては、これ使えますよ。
「死ぬこと以外の選択肢を見つけることができたんじゃないかしら」
思い詰めた時は、この夕雨子さんの台詞を忘れないでください。
勿論、夕雨子さんの過去、幸田すももの「出来事」についてのオチ等、物語自体の謎も多くありますので、純粋にストーリーとしても楽しめます。