※ネタバレ注意
(本日紹介する漫画)
「天帝少年 中村朝短編集」(中村朝著 KADOKAWA)
(作品紹介)
漫画家中村朝氏による6つの短編集。
(感想)
完全ホラーサスペンスの「白件」
大どんでん返しの「きみが小説家をみつけたら」
中国の化け物饕餮(トウテツ)の息子の物語「トウテツの子」
世界と主人公は、実は…というファンタジー表題作「天帝少年」
味覚が無い男性三弦の料理にまつわる物語「三弦巻き」
以上6作品が収録されています。
「流行り神プロトコル」は、ある日、フローリングの部屋に住むテレビ好きの座敷童の元に一人の少年志村阿智が転がり込んでくる短編物語です。
オチを知ってしまうと全く面白くなくなりますので、これ以上の説明は極力省きますが、志村阿智少年と入居者の「しあわせ」をひたすら願う座敷童との心の交流と愛に涙。
何度読んでも涙。これを書くために再度見返してやっぱり涙。
この物語の全てが最初からきちんと計算されているので、全ての出来事にちゃんと意味があります。なので、最低1回は読みなおすこと、つまり2回読むことを管理人は推奨します。
それだけでなく、本編のオチとは関係ない阿智少年と座敷童の幸せ問答もいいです。学資保険のCM(テレビより学習)を見て幸せが何かを学んだ座敷童に「それは幸せじゃなくて極力不幸を回避した人生だろ」の阿智少年の切り返しがステキです。
この幸せ問答については表題作の「天帝少年」にも出てきますが、
進学→安定した職業(例:公務員)→結婚→出産→定年退職→老後の一本道を「クリア」しないとダメ人間扱いされるという事については、管理人激しく同意。
それこそ、極力不幸を回避した人生=幸せかどうかなんて、実は誰にも分からないんですけどねー。人や環境は生きている限り目まぐるしく変わるので、その時の選択が最善とも限らないし、例えその都度極力回避したって実際不幸を回避しきれるかどうかは正しく神のみぞ知る、ですから。
あと、座敷童のキャラクターが純粋にカワイイです。
他に収録されている「栄養があってきれいな食べ物」である「三弦巻き」は、実際食べたら味がすごい事になりそうですが、作品のアイディアや考え方が秀逸なので、こちらの作品もおススメです。
この中でも一つでも気になる作品があれば、是非読んでみて下さい。